On Thursday, December 18, 2025, Ryo Watanuki and Wen Jie of our institute spoke at the symposium, “Now Is the Time for Japan–China Friendship!: Exploring Better Coexistence Between Foreign Residents in Japan and Japanese Society,” held at the First Members’ Office Building of the House of Representatives.
The presentation materials from the day are available at the link below.



【渡貫発表原稿】
一般社団法人日本産業イノベーション研究所の渡貫です。こうした場をいただき、ご尽力いただいた張会長をはじめ、関係者の皆様にお礼申し上げます。私は憲法、国際法の研究者として、安全保障や移民分野の研究に従事すると同時に、行政書士として、出入国管理や経営支援の実務に従事しています。
本日は、「在日外国人経営者のリアルと支援のこれから」ということでお話をいたします。現在当社では、財団法人トヨタ財団よりご支援をいただき、まだ実態が明らかになっているとは言い難い在留外国人経営者について、経営学、社会学、そして法学等の知見を多角的に検討し、それを実践的な支援に活かすことを目指した調査を行っております。また、財団法人橋本財団からは、日本でもしばしば親の介護に起因する介護休職や介護離職が問題となっていますが、それが在留外国人にも当てはまるのではないか、また当てはまる場合、介護離職のみならず、介護帰国があるのではないかという問題意識の下、在留外国人とそのご両親の介護問題に関する研究のご支援いただいております。本日お話するのは主に在留外国人経営者に関してですが、そこで得られた知見は必ずしも在留外国人経営者にとどまるものではなく、在留外国人全般、またひいては日本社会自体に対しても示唆を与えるものと考えております。
さて、近年在留外国人経営者に関連して新聞等を賑わせた話題は、在留資格「経営・管理」の厳格化です。これは、在留資格「経営・管理」が実質的な移住ビザになっているのではないかという批判を受けたものであり、メディア上でも、大阪のビル1棟に経営実態のない数十社のペーパーカンパニーがビザ取得のためだけに入居している、などセンセーショナルな報道が見受けられました。今回の改正の細かな内容やその妥当性について本日は時間の都合もあり触れないことと致します。しかし、公法の研究者として興味深かったことは、在留資格の認定基準は法務省令という行政法上も比較的地味なものであるにもかかわらず、その改正に大きな関心を集めたこと、そして、何より、普段は形式的なものになっている意見公募手続(パブリックコメント)を経て、上級レベルの日本語あるいは日本語が堪能な者の雇用という日本語要件が追加されたことが挙げられます。日本語力の重要性は、近年在留外国人の社会統合を考えるうえでも強調されていますが、当初案では日本語要件は課されていませんでした。その理由としては、まだ当初案検討資料などは直接見れておらずあくまでも現時点の推測ですが、当初案作成時にも日本語要件に関する議論はあったものの、在留資格「技術・人文・国際業務」、「高度専門職」など他の多くの高度人材ビザで日本語要件が必須でないこととの整合性の観点から、当初日本語要件は除外されたのではないかと考えています。しかし、パブリックコメント上で日本語要件が必要という声を受け、最終的には、在留資格間の整合性よりも国民不安の解消を優先し、日本語要件を含めたのではないように見受けられます。このことは、先般の改正が、既存の在留外国人経営者を「社会統合されていない存在」とみなす国民感情と無縁であるとは言い難いことを示唆しています。
このように、国民的な関心や感情も多分に向けられる在留外国人経営者についてですが、それでは、そもそも議論の前提として、私たちは、在留外国人経営者のことをどれほど知っているのでしょうか?この問いに答えるべく、研究を進めるうえで最初の課題となるのが、実態調査には不可欠なはずの在留外国人経営者の全体像が、実際にはよくわからないということです。その筆頭が、在留外国人経営者の総数です。在留外国人経営者は、在留資格「経営・管理」を持つ方に限られず、永住や日本人配偶者、定住者など、色々な在留資格が想定されます。そのため、在留外国人経営者の数を正確に把握するためには、法人や個人事業主も含めた日本における全事業体のうち、外国人経営者が何人いるのかという統計データが必要となります。ところが、こうしたデータは存在せず、研究者を含め、在留外国人経営者が何人いるのかさえ誰も把握できておらず、複数の推計が存在するのみです。実際、私たちも調査を進める中で、この問題を痛感しており、自分たちが見聞きしたものが、どれほど全体を反映しているのかについて確信が持てないのが現状です。
そこで私たちが採用している方法は、在留外国人経営者にインタビュー等を行うことで、経営者自身が自らの位置づけや経営についてどのように理解しているのかを内在的に描き出すというものです。これは、ドキュメンタリーのような取材と、調査票等を通じた統計的な調査との中間的なイメージです。これまで、日本における在留外国人の調査では、しばしば外国人という側面にばかり注目されてきましたが、私たちが特に意識しているのは、在留外国人経営者の経営者としての側面に着目することです。そして、こうした調査活動を通じて私たちが目指しているのは、在留外国人経営者が経営をどのように行い、そして事業上の課題をどのように感じているのか、そしてそれをどのように克服しようとしているのかを明らかにするとともに、それがもし外国人であることに起因するのであればその修正の提言を、もしそうではなく、純粋に経営問題であるのであれば、それに見当たった支援策を検討しよういうことです。言い換えれば、私たちの目標は、在留外国人経営者の経営者としての側面に着目することで、そうした方々の潜在能力を最大限に発揮する支援体制を構築することです。もっとも、聞き取り調査は時間がかかるという欠点があるほか、それぞれお時間をとってお話をお伺いする性質上、ご協力いただける方あって初めて実現するものです。もし、皆様に置かれましても、ご協力いただける方、またお近くにいるという場合、ぜひお声がけ下さいますと幸いです。
それでは最後に、こうして研究や実務に取り組む中で、はたして今何が言えるのかということですが、ここで一つの警句を引用したいと思います。それは、かつて社会学者のマックス・ウェーバーが述べた「私たちは、自らの仕事に赴き、人間としても、職業においても、日々求められていることに従う必要がある」といことです。これだけでは分かりにくいのですが、その前には次のように述べています。それは「憧れて待ち焦がれるだけでは何も実現しない」というものです。専門の方からは怒られる気もしますが、あえて簡単にまとめるならば、今抱えている問題に対して何らかの毅然とした答えを求め待っているのではなく、答えのない状況においてこそ、自らの役割や務めを忠実に果たす必要があるということです。ところが、昨今色々な場面で、個別具体的な問題に対して全体的な答えを求める、断片的に目にした情報を元に日本全体の政策を語る、自らにさえ課すことができないようなことを深遠そうなレトリックを通じて展開するなど、自分の了解できる範囲を大きく超え、大風呂敷を広げた話をよく耳にします。声を上げることは民主政の根幹であり、その価値は揺るぐことはありませんが、その一方で、私たちは、個々人があげた声がたとえ真摯なものであっても、それが時として権力性を有することも忘れてはいけません。とりわけ、在留外国人の問題に関しては、主権者として権力の決定権を有する国民が、それを持たない在留外国人について論じるという構造的非対称が存在します。そのため、こうした議論を行う際には、課題を特定し論じるという点では真剣でありつつも、同時に、自らの言動に抑制的かつ反省的な姿勢が求められます。そして、私の研究及び実務が、その一助になれればとのお伝えできればと思い、本日はお時間を頂戴いたしました。ご静聴いただきありがとうございました。
【文発表原稿】
一般社団法人日本産業イノベーション研究所の文捷(ぶん・しょう)です。
社会学・国際学の研究者として、在日外国人企業家の実態調査と研究に10年以上携わってきました。延べ300名を超える在日外国人の方々に調査協力をいただきました。現在は研究を続けながら、行政書士補助者、国際会計士の資格を持って、外国人企業の日本進出支援にも関わっています。
本日は、私が今進めている研究の紹介と、そこから見えてきた「実務への示唆」を共有します。
現在、当研究所では、トヨタ財団の助成で在留外国人経営者に関する調査を、橋本財団の助成で在留外国人の親の介護問題に関する研究を進めています。実はこの二つのテーマは、日本社会が外国人に向ける視線の「両極」を象徴しているように見えます。
トヨタ財団の文脈では、外国人経営者を高度人材、イノベーションの担い手として捉える視点です。日本の社会・経済に中長期で変化をもたらし得る存在として期待し、「外国人材が能力を発揮できる支援」に焦点が当たります。
一方で橋本財団では、近年は在日外国人が直面する福祉課題に力を入れ、外国人を福祉や制度の狭間で不利益を受けやすい存在として捉える視点です。たとえば私たちが助成研究されたテーマでは、同じ職場で働く日本人と比べても、在日外国人の親は日本の介護制度の恩恵を受けにくい場合があり、制度上の格差が生じ得ます。
つまり在日外国人は、「期待される高度人材」と「支援が必要な弱者」という両極の語られ方があります。これが外国人経営者・外国人企業の領域に入ると、矛盾はさらに複雑になります。その象徴が、経営・管理ビザをめぐる近年の厳格化の流れです。
以下では、私たちの視点から、改正後の要件を前提に、日本が求める外国人経営者の「理想像」の変化と、個人・企業としての向き合い方についてお話しします。
日本の「経営・管理ビザ」は、しばしば米国のEB-5投資移民ビザや、韓国のD-8-1(外商直接投資)ビザと比較されますが、各国の政策目的、在留資格の性格、投資要件には明確な違いがあります。たとえば米国のEB-5では、投資額が約80万〜105万米ドル((1億2,400万円ー約1億6,400万円相当)、と一定の雇用創出要件(例:フルタイム雇用10人以上)が課されるとされています。韓国のD-8-1では、1000万円以上の投資が要件となり、投資額が多いほど、ビザの承認が容易になり、審査期間も短くと説明されています。
これらと比べると、日本の経営・管理ビザは、改正前は資本金500万円でも申請が可能で、いわゆる「一人会社」も認められ、学歴要件も設けられていませんでした。投資の観点から見ると、こうした要件の低さが課題として指摘されます。やや極端なイメージになりますが、日本語ができない外国人の方が、ペッパーカンパニーをビルの一室に立てて、実態ある経営・管理活動を行われず、闇バイトをしている暮らしているなど、報道で散見します。
中で最も注目されているのは資本金要件です。旧来の500万円要件が3,000万円以上へと引き上げられました。皆さん、日本の世帯貯蓄の水準をご存じでしょうか。国税庁の統計によれば、二人以上世帯の貯蓄中央値は1,100万円前後とされています。簡単に言えば、3,000万円の現金は一般の日本の家庭にとっても容易に用意できる金額ではありません。すなわち、個人経営者や家族・世帯だけで3,000万円以上を単独で拠出することが難しいケースが多く、知人(投資家)と出資を出し合う形が増え、資本構成上、一人会社が複数株主がいる会社になる必要性が十分想定されます。経営学の観点から見れば、資本金要件の引き上げは、さらに外国人企業における「所有と経営の分離(不一致)」な現代企業への進化を促す効果があります。
次に雇用要件です。「常勤職員1名以上」の雇用が求められ、しかも対象は日本人、特別永住者、または永住者等の身分系在留資格に限られるといった運用が示されています。国税庁の公的統計では、日本の正社員の平均年収は530万円前後とされます。経営者本人と常勤職員、二人の人件費に伴う社会保険料負担、事務所家賃等の固定費を加えると、3000万円は、本格的に事業投資を加速する前の段階でも、1年程度で相当部分が消耗し得ます。
ここまでで、ビザ制度上「外国人経営者の理想像」が変化してきたことが、ある程度見えてきたのではないでしょうか。要点を一言で言えば、制度が求める姿は、「個人の挑戦」から「社会的主体としての企業」へと、より明確にシフトしています。
改正前は、比較的少ない資本でも、いわゆる一人会社の形でも、起業の初期段階から挑戦できる余地がありました。これは探索期――アイデア検証や市場開拓の段階にある起業家を呼び込む設計だったと整理できます。
一方で改正後は、一定の資本規模、実態ある運営、雇用創出などを通じて、日本社会に「関与し続けられる」ことが前提になりつつあります。つまり、参入の広さよりも、持続性・責任・組織性を重視する「事業体の選別」の方向です。
なお国際スタートアップ支援については、政府が別枠でJ-Find(未来創造人材制度)や、いわゆるスタートアップビザ(外国人起業活動促進事業)等を整備してきた経緯もあります。日本政府としてはスタートアップ誘致を進めつつ、従来の経営・管理ビザとは区別し、制度の精緻化を進めるスタンスが読み取れます。
では、この改正局面において、個人・企業はどう向き合うべきでしょうか。本日の議論を踏まえ、最後に一つの視点を共有して締めくくりたいと思います。
外国人経営者個人としては、「個人」から「経営主体」へ意識を進化させること。言い換えると、「自分一人でどこまでできるか」ではなく、「誰と、どのような組織をつくれるか」という視点へ、できるだけ早い段階で思考を切り替えることです。
そして外国人経営者の企業で雇用される日本人・永住者としては、実際に組織を支える人材として位置づけ、外国人経営者のパートナになって、日本社会に定着させる役割がが重要になります。
最後のメッセージとして申し上げたいのは、制度が単に“厳しくなった”のではなく、企業に求められる「成熟度」が明確化された、という点です。個人としては早期に組織化を意識すること。企業としては成長の道筋を示すこと。それが改正後の時代における、外国人経営者にとって最も現実的で建設的な姿勢だと考えます。
ご清聴ありがとうございました。
